吉坊が3日連続で大作に挑む
(※トラブルにより、写真は後程アップいたします)
独演会では明治期に出版された講釈本「三都勇劔傳」に収録されている3つ物語を吉坊が自ら落語化して、3日連続で日替わりで演じる。3作とも「名刀」「妖刀」と言われる「刀」を軸に起きた、江戸時代の3つの事件を元にしている。吉坊は「船越重右衛門」、「佐野次郎左衛門」の2作は初演で、一度演じたことのある「大丸屋騒動實記(だいまるやそうどうじつき)」には大幅に手を加えて挑む。吉坊と親交が深く、前回の「大丸屋騒動實記」をともに手掛けた木ノ下歌舞伎の木ノ下裕一が補綴する
コロナ禍の真っただ中、外に出ることができず、インターネットで古本を探していた時に「大丸屋騒動實記」の講釈本を見つけたことがこの噺に挑むきっかけとなった。「落語の『大丸屋騒動』の元になったものなんですが、読んでみたら、その前がたくさんある。落語の後もある。一度、通しでできないだろうか」と思った吉坊は、大阪の近鉄アート館で行っている自分の会で2020年に挑戦。ところがその後、それが3作の合同本と判明して「三都勇劔傳」を入手した。読んでいくうちに「これを落語にできないだろうか。1日1作の形でやってみようじゃないか」と思い付いた。
5日の「船越重右衛門」は阿波の武士・船越重右衛門が名刀を携え、広島、大阪などどんどん場所を移動しながら敵討ちをする武勇伝。6日の「佐野次郎左衛門」は江戸の吉原で起きた「吉原百人斬り」の事件を元にした物語。7日の「大丸屋騒動實記」は京都の商家「大丸屋」の若旦那が妖刀で次々と人を殺めていく凄惨な物語だ。「大丸屋騒動實記」は落語に、「船越重右衛門」は人気の講釈の作品に、そして「佐野次郎左衛門」は歌舞伎の名作「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」となった。吉坊は「大丸屋騒動實記」の初演では約1時間半を前後編に分けて口演したが、今回、ほかの2作も同じ形での口演となる予定だ。
資料を集めて徹底的に調べ、教えを請いながら噺を組み立てていく。それは大師匠の桂米朝や師匠の桂吉朝の姿を見てきたことが礎となっている。「うちの師匠も調べるのが好きだった。米朝師匠の影響は確実にあります。米朝師匠は(噺の)元がどこにあったのか、そもそもこのギャグは誰がやり始めたものかとか、稽古のたびに教えてくれる。そこでその噺を継いでいる中の1人という自覚をさせていただきました。元春日大社の権宮司の岡本彰夫先生からも『孫引きをするな。なるべく直接調べなさい。そこに資料が載っているんやったら、君が(自分の目で)見なさい』と教えられました」。師匠たちから教えられた「調べ物の大事さ」を忠実に守り、実践してきた。
勉強熱心で、踊りや鼓などの稽古にも通い、それが落語にも生きている。端正で折り紙付きの高座は日々の努力に裏打ちされたものだ。落語に向き合い、研鑽を重ねてきた道のりの中で数々の賞も受賞。昨年は繁昌亭大賞など複数の賞に輝いた。一方で、吉坊は日本舞踊や歌舞伎、雅楽などの古典芸能にも精通し、ナビゲーターの役割も担っている。「どこまでお客さまに伝えられるか。今回は25年間、何をやってきたんやというのを見ていただく集大成のようなものです」
「桂吉坊噺家25周年記念独演会」
3/5(火) 開演=18:30
3/6(水) ・7(木) 開演=14:00
会場=京都芸術劇場春秋座
料金=各日とも前-一般3800
学生&ユース(25歳以下)2000(座席指定は当日)
高校以下無料(要事前申込)
当3800(全指)
3日間通し券11000(全指・非売品お土産付)
問い合わせ=さかいひろこworks:06-6155-5561
桂吉坊公式webサイト https://kichibo.com/
桂吉坊(かつら・きちぼう)
1981年生まれ、兵庫県西宮市出身。高校在学中の1999年1月10日桂吉朝に入門。同年3月14日に「岡町落語ランド」で初舞台(「東の旅~煮売屋」)。2000年4月から2003年4月まで大師匠の桂米朝宅で内弟子修業。
〈受賞歴〉
2011年 咲くやこの花賞
2008年 第3回繁昌亭大賞輝き賞
2010年 第47回なにわ芸術祭奨励賞
2011年 第29回咲くやこの花賞大衆芸能部門受賞。
2012年 第49回なにわ芸術祭新人賞
2014年 第9回繁昌亭大賞奨励賞
2016年 国立演芸場 花形演芸大賞 銀賞
2019年 国立演芸場 花形演芸大賞 金賞
2023年 令和4年度大阪文化祭賞 奨励賞
2023年 第3回古典の日文化基金賞
2023年 第18回繁昌亭大賞