露の都門下の露の紫が入門10周年を記念して、10月24日に大阪の天満天神繁昌亭で初めての独演会を開く。紫は短大卒業後、MCの仕事をしていた時に、天満天神繁昌亭で行われていた落語家入門講座を受講。当時はドラマ「タイガー&ドラゴン」や「ちりとてちん」がブームとなり、大阪でも2006年に落語の定席・天満天神繁昌亭がオープンして落語人気が高まっていた。
紫 プロの落語家が教えてくれるというのを見て受講しました。それがはまったんですよね。人前に出てしゃべりたいというのと、お笑いや芝居が好きなこともあって。MC時代にはM-1やR-1にも出たりしてたんです。もちろん、1回戦であかんかったんですけど(笑)。小さい劇場でお芝居にも出たりしてたんですが、なんで落語に気づかんかったんやろうって(笑)。MCの時にはもらった台本を覚えるのがあれだけ嫌やったのに、その時は落語の台詞を覚えるのが楽しくて仕方なかったです。
入門講座受講後の2008年9月に、福井県の小浜市で初開催された「ちりとてちん杯ふくい女性落語大会」で優勝して「初代女王」となり、翌10月に女性落語家の露の都に入門した。
紫 今考えたら、あの時の自分はすごいなと思います。何も知らんって強いですね(笑)。もう絶対この道で生きていきたいと思いました。師匠は女性落語家の第1号で、とてつもないことをやってこられたんやろうなと。そこに行きたいと思いました。「MC(の口調)が抜けへん」とか言われたりもしましたが、MCの仕事をやってなかったらよかったと思ってはいませんし、それがどこかで活きてくると思うんです。
長く男性が演じることが前提だった落語を女性が演じることは難しい。多くの女性落語家がそこに向き合い、それぞれが工夫と努力を重ねている。
紫 登場人物を女性に変えてしまっていいというもんでもないなって。男性しか出てこない噺でも、楽しくしようと。戦ってきたのはそこですね。ネタ選びでもやりたいのと好きなのは違いますし。ネタ選びは考えます。女の人が登場するなら、男の人ができんくらいの女の人をやらなあかんというのもあるし。これはもっと年を重ねて、経験せなあかんなという部分でもあるんですけど。
今回の独演会では大ネタの「中村仲蔵」に挑む。苦労を重ね、名優として名を残した実在の人物を題材にした芝居噺で、女性が演じるのは珍しい。
紫 この噺が好きなんです。やり続けて、やり抜いたら見えてくるものがある。ちょっと自分に置き換えてるような気がします。女の噺家やけど、妥協してとか、これくらいでええやろとかでやってたらそれまでやと思うんで。精一杯やってみたいなと思います。
天満天神繁昌亭の夜席は入門10年以上のキャリアがないと借りることができない。「入門10年」は大きな節目のひとつでもある。
紫 10年からが新たなスタートやと思っています。「落語家・露の紫」がどんなっていうのはまだ具体的にないんですけど、ぶつかって模索していきたいです。これからは人情噺もやりたいですし、新作落語もできたらと思っています。
独演会には師匠の都がゲストで出演。MC時代に一時、一緒に番組をしていた漫才のシンデレラエキスプレスのほか、林家染雀が寄席の踊り「松づくし」で華を添える。
紫 落語の間に踊りや漫才をしていただいて、華やかに楽しくしたいなと。遅い入門ではあったんですけど、10年たった今の私を見てください。
「露の紫独演会 西・大阪地固め篇」
10/24(水) 開演=18:30
会場=天満天神繁昌亭(メトロ「南森町」,JR「大阪天満宮」)
料金=前2500 当3000(全指)
出演=紫「中村仲蔵」他一席/シンデレラエキスプレス(漫才)/染雀(踊り)/三語
問い合わせ=むらさき噺旅実行委員会:06-6105-3217
※9月30日の台風で延期となった東京公演は2019年3月13日に開催されます。
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露の紫(つゆの・むらさき)
2008年10月、露の都に入門。2009年1月「ASA伏見寄席」で初舞台。演目は兵庫船」。2014年12月、「第9回繁昌亭大賞輝き賞」を受賞