桂米朝一門の桂歌之助が芸歴20周年を記念して、5月8日から28日まで、途中に休演日(5/18)を1日はさむ20日間連続の落語会「歌之助やけくそ二十日間」を大阪市北区のツギハギ荘で開催する。
歌之助は1997年3月に先代の二代目桂歌之助に入門。入門5年目で師匠の歌之助が亡くなったのち、10年目に師匠の名を襲名して前名の歌々志(かかし)改メ三代目桂歌之助となった。今年は芸歴20年のうち、歌々志時代を10年、歌之助になって10年の節目の年だ。
―歌之助は千葉大学で落研に入って落語と出会い、落語家を志した。
歌之助 この世界に入る時に、別の人間になるイメージやったんですよね。新しい人間になる。だからまったくタイプの違う人を最初探したんですけど、あまりタイプが違いすぎるのも違うかなと。親子みたいな関係ですからね。一生続きますので。落語作家の小佐田定雄先生の本とかを見てると「歌之助」が出てくる。経歴を見ると、師匠も浪人しているし、建築家を目指していて、僕も建築科を出てますので共通点がやたら多い。ずっと関東にいたもんで、高座を見る前に本で知って、合うんじゃないかと。
―入門するまで、師匠のことはほとんど知らなかったという。
歌之助 入門志願するまでに1ぺんくらいしか落語を聞いたことがなかったんです(笑)。「善光寺骨(こつ)寄せ」は1ぺん見てましたけど。地味そうに見えるけど、おもろいことをする人やなと思ってたんです。親は大反対ですよね。20年前ですからね。今やったら繁昌亭もありますし、イメージがありますけど、当時は噺家が何人いて、どういう活動をしているのか全く分からない。両親は二人とも亡くなりましたが、襲名とか賞をもらった時に生きていたので何とかいい報告はできたと思います。
―師匠の先代・歌之助は「茶の湯」など当時は珍しい噺を多く手掛け、「やけくそ五日間」などのユニークな企画公演を多く開催していた。「歌之助が落語会を開けば事件が起きる」という伝説を持ち、酒豪でも知られたが、当代歌之助が入門した頃に病で倒れて以降は一切、酒を口にしなかったという。
歌之助 今回は師匠のことを思い出して、「やけくそ五日間」の名を借りようと思って「やけくそ二十日間」と名付けました。昔は特にコアなファンが集まる会が多かったんで、珍しい噺とか東京の噺をどんどん輸入していったんだと思います。「ねずみ」も移したって言うてはりました。
―師匠が亡くなったあと、歌之助はほかの門下に入らず、ここまで来た。
歌之助 師匠が亡くなり、(いっぱいいっぱいで)たいへんなことというのも最初はわからなかったです。でも、いろんな方に気に留めていただき、稽古をつけていただきました。そのうちに繁昌亭ができ、襲名して、「山あり、谷あり」という感じでしたけど、いろんな方に助けていただきました。
―連続の落語会をすることは何年も前から考えていた。そのきっかけは2009年に桂雀三郎が行った還暦記念の30日間連続落語会だった。
歌之助 その会に出していただいた時に、雀三郎師匠が打ち上げで「ごっつ充実した毎日やねん」と。朝、稽古して、本番を迎えて、打ち上げで飲んでというこのリズムがいいとおっしゃっていて。それに刺激を受けて、「いつか自分もやりたいな」と思いまして。ちょうどツギハギ荘という会場もありましたし。
―今回、歌之助は師匠から教わったネタを中心に1日2席ずつ、全40席を演じる。唯一、先代歌之助だけが演じた、舞台上で自作の骸骨を作る演出を盛り込んだ「善光寺骨寄せ」なども披露する。
歌之助 師匠から5年間で11本(ネタを)つけてもらいました。「道具屋」(22日)は初めて師匠に稽古をしてもらったネタです。「ねずみ」(19日)は師匠が一時退院した時に習った最後のネタで、途中で師匠が亡くなり、最後までは聞いていただけませんでした。(珍しい)「しびんの花活け」は師匠が亡くなった後に覚えました。「骨寄せ」は習ったのではないのです。地噺としてはなんという噺やなくて、コツ(骨)の操作だけですのでね。結局、あれはコツを自分で作ることに意味があるんです。自分が作ったものに愛情があるんで、その気持ちが滲み出て、聞いてる人が納得すると。師匠が苦労して作ったものをぽっともらって操作だけ教えてもらっても、誰も何とも思わないです。だからかえってよかったと思います。僕も自分で骸骨を作りましたからね。
―16日には去年1年かけて自身の会で作り上げた新作「つまみ恋詩」も演じる。
歌之助 繁昌亭で定期的にやっていた落語会でお客さんにアンケートを取りながら作った新作で、今年の1月に完成しました。昔、「はなしか入門」を作りまして、今回が正確には3つ目。何回もやろうと思ったのは2つ目です。
―この会では連日、前座とほか1名が出演する。
歌之助 全員で40人出てもらいます。基本的に後輩の米朝一門の人間に全員出てもらい、ほかの一門や講談の旭堂南湖さんたちにも出てもらいます。
―「この1年は挑戦をテーマに掲げたい」と2月には中国語落語にも挑戦。今回の「挑戦」第2弾に続き、秋は恒例の独演会に臨む。5年後の25周年には50歳の節目を迎える。
歌之助 この20日間で湧き上がるものがあるかなと。どっぷり落語につかって、やっているうちにつかむものがあるんじゃないかな。20年といってもまだまだこれからですし、ここで方向性を見つけられたらと。これから長い芸人人生ですから。今回は面白くて密度の濃い会になればなと思っています。会場のツギハギ荘の雰囲気もお楽しみいただけたらと思います。
楽し気な雰囲気でいい時間をすごせたなという感じで帰ってもらえたら。
「歌之助やけくそ二十日間」
5/8(月)~28(日) ※18日は休演
開演=19:00(平日)、17:00(28日以外の土、日)、14:00(28日)
料金=予1700 当2000
会場=ツギハギ荘(地下鉄「南森町」,JR「大阪天満宮」)
問い合わせ=ウタコ倶楽部:090-2352-9542
※スタンプカードで5回、10回、15回とスタンプがたまった人に粗品を進呈!
桂歌之助
1971年、大阪府高槻市出身。千葉大学工学部卒業後の1997年3月に二代目桂歌之助に入門して歌々志。2007年に三代目桂歌之助を襲名